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単語帳が身につかない、その具体的な仕組み

意志の問題ではありません。アルファベット順、文脈の欠落、再認だけの練習、最初の30ページを5回。仕組みごとに分けると、どれも直せます。そして単語帳が本当に効く場面もあります。

単語帳を買って、3週間後に本棚に戻っている。この経験をした人は、たいてい自分の根気のせいにします。ですが同じ失敗の形が、これほど多くの違う人に同じように起きるなら、それは性格ではなく構造です。

以下、失敗の仕組みを6つに分けます。全部が全部の単語帳に当てはまるわけではありませんが、自分が止まった理由がどれかは、たぶん見つかります。

仕組み1 — アルファベット順

見出し語がアルファベット順に並んでいると、隣り合う語が形も似ています。adapt、adept、adopt。affect、effect。complement、compliment。似た形の語を続けて覚えると、記憶が互いに干渉して、あとでどちらがどちらか思い出せなくなります。

これは記憶研究でよく知られた現象で、似たものをまとめて学ぶと区別が曖昧になります。区別が難しい語こそ、離して、別々の文脈で出会うべきなのに、アルファベット順は正反対のことをします。しかもこの干渉は、覚えている最中には気づけません。試験の日にはじめて表面化します。

仕組み2 — 文脈がない

見出し語と訳語だけが並んでいる形式は、語をその使われ方から切り離します。abandon = 捨てる、と覚えても、abandon a plan と abandon a child と abandon oneself to では、日本語に直したときの語が全部違います。訳語1つでは、その語がどこに置かれるのかがわかりません。

さらに問題なのは、文脈がないと記憶の手がかりも1本しか作られないことです。文の中で出会った語には、周りの語、話の内容、そのとき感じたことなど複数の手がかりが付きます。手がかりが多いほど、あとで引き出せる確率が上がります。訳語1つだけの語は、その1本が切れたら終わりです。

仕組み3 — 再認は練習しても、想起は練習していない

ページを開いて、左の語を見て、右の訳を見て、「ああ知ってる」と思う。この動作で練習しているのは再認、つまり見せられたものが既知かどうかを判定する能力です。

ところが、読解でも会話でも必要なのは想起です。文の中でその語を見て、意味が自分から出てくること。あるいは言いたい内容があって、その語が出てくること。再認と想起は、感覚としては近くても、必要な記憶の強さがまるで違います。

そして再認は簡単なので、練習していると気持ちがいい。ページをめくるたびに「知ってる」「知ってる」と思えるので、進んでいる感触があります。この感触が実力と乖離しているところが、この仕組みのいちばん危険なところです。訳を隠す、という単純な操作でかなり改善しますが、隠すと苦しくなるので、多くの人は隠しません。

仕組み4 — 最初の30ページを5回

中断して、また最初から始める。これを繰り返すと、冒頭の語だけが極端に強くなり、後半は一度も触れられません。単語帳の背表紙側だけがきれいなまま残るのはこのためです。

対処は単純で、2周目は前回止まったところから始めることです。あるいは、最初から通しで進めるのをやめて、日付ではなくページで区切る。心理的には最初に戻りたくなりますが、戻った分だけ後半に時間が来なくなります。

仕組み5 — 一語一訳

多くの単語帳は、紙幅の都合で訳語を1つか2つしか載せません。ところが実際の英語では、頻度の高い語ほど意味が多い。get、take、run、set。これらに1つの訳を当てても、実際に出会う用法の大半は外れます。

しかも、覚えてしまった1つの訳が邪魔をすることがあります。run = 走る、と固定した人は、run a company や run out of time に出会ったときに、既に知っている語だと思っているので調べません。知っているつもりの語は、知らない語より厄介です。

仕組み6 — 「知っている」の判定が紙の上で行われている

これがいちばん深い問題かもしれません。単語帳で「覚えた」と判定した語が、実際の文の中で出てきたときに認識できるとはかぎりません。判定が行われた環境と、能力が試される環境が違うからです。

紙の上では、その語は単独で、前後関係なしに、しかも「これは今覚えようとしている語だ」という文脈つきで提示されます。実際の文の中では、その語は他の語に埋もれ、活用して形が変わり、期待していない位置に現れます。

対処は、判定を文の中でやることです。覚えた語が入った文を読んでみて、止まらずに意味が取れたらはじめて「覚えた」とする。この基準にすると、覚えた語の数はいったん激減しますが、その数字のほうが本物です。

それでも単語帳が本当に役に立つ場面

正直に書いておくと、単語帳を全部捨てるべきだという話ではありません。次の場面では、読書より単語帳のほうが確実に速い。

共通しているのは、どれも単語帳を単独の学習法ではなく、読むことの補助として使っている点です。順番としては、文の中で出会って、そのあと整理する。この向きなら単語帳は働きます。

Lexi はこの向きに沿って作られています。単語帳としては Everyday、Phrasal Verbs & Set Expressions、高考、CET-4、CET-6、大学院入試、IELTS、TOEFL、GRE、Business が入っていますが、リストとして眺めるのではなく、そこから作られた文が1つずつ流れてきて、その文の中で語に出会う形になっています。出会った語には印をつけたり、自分用のメモを書いたりできて、日ごとの履歴にも残ります。判定が紙の上ではなく文の中で行われる、というのが仕組み6への答えです。

よくある質問

単語帳は何周すれば覚えられますか。

周回数よりも、各周で何をしているかのほうが決定的です。訳を見ながら5周しても、練習しているのは再認だけなので、文の中で出てきたときに使えるようにはなりません。逆に、訳を隠して想起する形で2周したほうが定着します。周回数を目標にすると、進んだ感触を得るために簡単な作業を選びがちになるので、目標は「訳を隠して答えられた語の数」のように、苦しいほうの数字で置いてください。

アルファベット順の単語帳を持っているのですが、買い直すべきですか。

買い直す必要はありません。順番を自分で崩せば大部分の問題は消えます。たとえば、ページを順に進めるのではなく、章をランダムに選ぶ、あるいは1日分をいくつかの離れた場所から集める。似た形の語が続けて出てこない状態を作ることが目的なので、方法は何でも構いません。形の似た語に気づいたときに、その場で意識して対比しておくのも有効です。

文脈のある単語帳、つまり例文つきのものなら大丈夫ですか。

かなり良くなりますが、例文の使われ方次第です。見出し語を覚えてから例文を確認する形だと、例文は装飾にしかなりません。逆に、例文を先に読んで、そこから語の意味を推測してから確認する形にすると、文脈が本来の仕事をします。同じ本でも、どちらの向きで使うかで効果が変わります。例文がその語の典型的な使われ方を示しているか、無理に作られた不自然な文でないかも見ておいてください。

覚えたはずの語が試験で出てこないのはなぜですか。

覚えた環境と試される環境が違うからです。単語帳の上では、その語は単独で、覚えようとしている文脈つきで提示されます。試験の長文では、活用して形が変わり、他の語に埋もれ、しかも急いでいる状態で出てきます。対策としては、覚える段階から文の中で会っておくこと。読解問題を解くときに、知っているはずなのに反応が遅れた語をメモしておくと、この差がどこにあるかが見えてきます。

結局、単語帳と多読はどちらがいいのですか。

対立する二択ではなく、役割が違います。単語帳は速いが浅く、読書は遅いが深い。締め切りが近いときや、ある分野に入る前の準備には単語帳が向きます。使える語彙に育てる段階では読書が向きます。実務的には、単語帳で当たりをつけて、読書でその語に何度も出会って定着させる、という順番が最も効率的です。片方だけを選ぶ必要はありません。

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Lexiは短い英文を1つずつ差し出します。そこに知らない語はちょうど1つ。タップすれば発音記号と意味、もう一度で文全体の訳、どちらも読み上げられます。ライブラリは端末の中にあるので電波がなくても動き、アカウント登録もありません。1日30文、すべての単語帳、すべての語義言語が無料です。

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