試験用の単語帳を、無駄なく使う
試験用の単語帳は特定の目的のために作られています。向いていることと向いていないことを分け、試験日から逆算した進め方と、直前2週間にやることを書きます。
IELTS、TOEFL、GRE、CET-4、CET-6、大学院入試。試験名のついた単語帳は、汎用の単語帳とは作られ方が違います。違いを知っておくと、何に使えて何に使えないかがはっきりします。
試験用単語帳はどう作られているか
基本は頻度です。過去問や公式教材、あるいはその試験が扱う分野の文章を集めて、出現頻度の高い語を抜き出す。そこから、受験者が既に知っているであろう基礎語を除き、残ったものを並べる。だいたいこの手順です。
ここから、二つのことが導かれます。第一に、リストの語は「その試験に出やすい」という理由だけで集められていて、意味的な関連はありません。第二に、頻度は連続量なので、リストの上位と下位では出会う確率が桁で違います。最初の数百語は本当によく出て、後半は一度も出ないまま試験が終わることが普通にあります。
この二つ目の性質は、進め方に直接効いてきます。全部を均等に扱うのは、頻度分布を無視した配分だということです。
「一冊全部覚える」がなぜ失敗するか
3000語の単語帳を買って、全部覚えると決める。この計画がうまくいかない理由は三つあります。
- 時間が足りない。1語あたり複数回の遭遇が必要で、その回数を3000語ぶん確保するには、多くの受験者が持っている時間を超えます。
- 配分が頻度に合っていない。全部覚えるという目標は、上位100語と下位100語に同じ時間を割り当てます。前者は確実に出て、後者はほぼ出ない。
- 中断すると最初に戻る。前の記事で書いた「最初の30ページを5回」がここでも起きます。試験用単語帳は分量が多いぶん、この失敗の被害も大きい。
かわりに使えるのは、範囲を先に切ることです。試験日までに確保できる時間を計算して、そこに収まる語数だけを対象にする。3000語のうち上位1200語だけを本気でやり、残りは触れない。この判断は不完全に見えますが、3000語を薄く一周するより点数に効きます。
試験日から逆算する
具体的な組み立て方です。試験日が決まっているなら、そこから逆に引きます。
- 試験日までの週数を数え、1週間に単語に使える時間を正直に見積もります。過大に見積もると全部崩れます。
- その時間で扱える語数を決めます。1語につき最低でも数回は出会う前提で計算してください。
- その語数ぶんを、単語帳の上位から切り取ります。頻度順でない単語帳なら、公式教材や過去問に出た語を優先します。
- 最後の2週間は新出語を入れないと決めて、その前で新規学習を終える日を先に置きます。
- 残りの期間を週で割り、1週あたりの語数を出します。日ではなく週で割るのは、体調や予定で1日飛んでも計画が壊れないようにするためです。
この計画で重要なのは4番目です。試験直前に新しい語を入れるのは、ほぼ確実に無駄になります。定着に必要な遭遇回数を確保する時間が残っていないからです。
見てわかる語と、使える語は別物です
読解セクションに必要なのは受容語彙です。文の中でその語を見たときに、止まらずに意味が取れればいい。綴りは書けなくても、発音が曖昧でも、前置詞との組み合わせを知らなくても構いません。
writing と speaking に必要なのは産出語彙です。こちらは、意味を知っているだけでは足りません。綴りが書ける、発音できる、どの語と一緒に使うかを知っている、そしてその場面で使ってよいレジスターかを判断できる。必要な情報量が数倍あります。
ここを混同すると、時間配分を間違えます。単語帳を3000語やっても writing の点数が上がらないのは、単語帳が作っているのが受容語彙だからです。逆に、産出用に育てる語は数十語で足ります。使い回せる語を少数、深く仕上げるほうが、点数には効きます。
- 受容語彙は広く浅く。読解に出てくる語を数多く、見て意味が取れる状態にします。
- 産出語彙は狭く深く。自分がよく書く話題で使う語を30から50語選び、綴り、発音、よく一緒に使う語、そして例文までまとめて仕上げます。
- 産出語彙は、単語帳から選ぶより、自分が書いた答案の中で「言いたかったのに出てこなかった語」から選ぶほうが実用的です。
直前2週間に何をするか
新規学習をやめて、既にやった範囲だけを回します。ここで新しい語に手を出したくなるのは自然な衝動ですが、費用対効果が最悪です。
- 訳を隠して、既習範囲を高速で通します。反応が遅れた語だけを抜き出します。
- 抜き出した語を、単独ではなく文の中で確認します。過去問や公式教材の中でその語が使われている箇所を探すのが理想です。
- 産出用の30から50語を、実際に書いて、声に出して確認します。書けない綴り、言えない発音がないかを見ます。
- 前日は新しいことをせず、既に反応が速い語を眺めて安心してください。記憶より睡眠のほうが点数に効きます。
日本の受験者にとっての英検・TOEIC との関係
英検や TOEIC の単語帳は、上と同じ原理で作られています。ただし試験の性質が違うので、リストの中身は大きく異なります。TOEIC はビジネス場面の語彙に偏り、英検は級によって扱う範囲が階段状に変わります。IELTS や TOEFL の単語帳をそのまま流用すると、学術語彙に時間を使うことになるので、効率は落ちます。
一方で、どの試験でも重なる帯があります。頻度の高い語、特に学術的でも専門的でもない中頻度語は、試験をまたいで出てきます。複数の試験を受ける予定があるなら、この重なる帯を先に固めておくのが合理的です。
Lexi に入っている単語帳は、Everyday、Phrasal Verbs & Set Expressions、高考、CET-4、CET-6、大学院入試、IELTS、TOEFL、GRE、Business の10種です。英検や TOEIC の単語帳は入っていません。ただ、リストを暗記するのではなく、選んだ単語帳から作られた文が1つずつ流れてきて、その文の中で語に出会う形なので、受容語彙を「見て止まらない」状態にするための道具としては、試験の名前が一致していなくても使えます。10種すべてが無料で使えるので、どれが自分に合うかを試してから決められます。
よくある質問
試験まで1か月しかありません。何語を目標にすべきですか。
語数を目標にするより、範囲を切ることをおすすめします。1か月で確保できる単語学習の時間を正直に計算し、1語につき複数回の遭遇が必要だという前提で割り算してください。多くの人にとって、この計算の答えは数百語です。3000語のリストを一周するより、上位数百語を確実に反応できる状態にするほうが、読解の速度に効きます。残りには触れないと決めるのが、この期間での最善手です。
単語帳の語を全部覚えれば読解は解けますか。
解けません。読解には語彙のほかに、文構造を素早く処理する力、段落の展開を追う力、設問が何を聞いているかを見抜く力が要ります。語彙は必要条件であって十分条件ではありません。実際、語彙を増やしたのに読解の点が動かない人は、語彙ではなく処理速度で詰まっていることが多い。単語帳と並行して、実際の長文を時間を計って読む練習を必ず入れてください。
受容語彙と産出語彙は、どう使い分けて練習するのですか。
受容語彙は、文の中で見て止まらないことがゴールなので、大量の語に何度も出会う形で練習します。産出語彙は、書ける・言える・正しい語と組み合わせられることがゴールなので、少数の語を実際に書いて声に出して練習します。目安として、受容は数百から数千語、産出は数十語。産出用の語は、自分の答案で言いたかったのに出てこなかった語から選ぶと無駄がありません。
複数の試験を受ける場合、単語帳も複数必要ですか。
必ずしも必要ありません。試験用の単語帳には重なる帯があり、特に学術的でも専門的でもない中頻度語は、どの試験でも出てきます。まずその重なる部分を固めて、それから各試験に固有の帯だけを足すのが効率的です。逆に、性質が大きく違う試験、たとえばビジネス寄りのものと学術寄りのものを同時に受けるなら、固有部分の差が大きいので、それぞれの対策は分けたほうがいいでしょう。
試験前日は単語をやるべきですか。
やるとしても、新しい語には手を出さないでください。前日に入れた語が定着する見込みはほとんどなく、そのために睡眠を削るほうが確実に損です。既に反応が速い語を軽く眺めて、自分が準備できていることを確認する程度にとどめてください。前日の学習の主な効果は、記憶を増やすことではなく不安を減らすことなので、その目的に合った量にしておくのが合理的です。
10分だけ、この方法を試す
Lexiは短い英文を1つずつ差し出します。そこに知らない語はちょうど1つ。タップすれば発音記号と意味、もう一度で文全体の訳、どちらも読み上げられます。ライブラリは端末の中にあるので電波がなくても動き、アカウント登録もありません。1日30文、すべての単語帳、すべての語義言語が無料です。