音声合成を、発音練習に使う
聞く、真似る、録る、比べる。この四つで合成音声はかなり役に立ちます。ただし、それは合成された音であって、あなたの発音に対する母語話者の判断ではありません。
端末の読み上げ機能を、便利な補助くらいに思っている人は多いと思います。ですが使い方を決めると、発音練習の道具としてかなり働きます。同時に、はっきりした限界もあります。両方を知っておくのが実用的です。
基本の四段階
手順は単純です。聞く、真似る、録る、比べる。この四つを1つの語または1つの文に対して回します。
- 聞く。まず何もせずに2回聞きます。1回目は全体、2回目は強く聞こえる音節に注意を向けます。
- 真似る。音声と同時に、あるいは直後に、自分でも声を出します。意味を考えずに音だけを追ってください。
- 録る。自分の声を録音します。端末の録音アプリで十分です。この段階を飛ばす人が多いのですが、飛ばすと次が成立しません。
- 比べる。合成音声と自分の録音を交互に再生します。違いは、口の中では絶対にわかりません。録音してはじめて聞こえます。
4番目が要です。自分が話しているとき、耳に届く音は、空気を伝ってくる音と骨を伝ってくる音の混ざったものです。他人が聞いている音とは違います。だから、自分では正しく言えていると感じているのに、録音を聞くと全く違うということが普通に起きます。この差を埋める方法は、録音するしかありません。
比べるときは、全体の印象ではなく、具体的な違いを一つ探してください。母音の長さか、強勢の位置か、語尾の子音か。一つ見つけて、それだけを直してもう一度録る。全部を一度に直そうとすると、どれも直りません。
合成音声が得意なこと
強勢の位置
現代の音声合成は、語の強勢をかなり正確に置きます。photograph と photography のように、同じ語族で強勢が移動する組を続けて聞くと、違いがはっきりわかります。この情報は発音記号の ˈ を見ても得られますが、耳で聞いたほうが速く身につきます。
連結と音の変化
文で読み上げさせると、語と語のつながりが聞けます。an apple が「アナポー」に近く聞こえる、want to が縮む、did you の d と y が混ざる。こうした変化は、語を単独で聞いていては一生わかりません。文を読み上げさせる価値はここにあります。
そして、これは聞き取りの練習にもなります。英語が聞き取れない原因のかなりの部分は、知らない語ではなく、知っている語が変化していて認識できないことです。自分が読める文を読み上げさせて、文字と音の対応を確認する作業は、聞き取りに直接効きます。
活字でしか見たことのない語
読書で覚えた語には、音がついていません。読めるけれど発音を知らない語が、誰にでもかなりの数あります。この状態の語は、会話では使えませんし、聞いても認識できません。読み上げさせれば、その場で音が付きます。参照としての用途では、合成音声は十分に信頼できます。
合成音声が得意でないこと
ここははっきり書いておきます。合成音声は、あなたの発音を評価しません。あなたが真似た音が正しいかどうかを判定してくれるわけではなく、単に手本を提示するだけです。
そして手本そのものにも限界があります。合成された音は、生身の話者が実際に話す音とは違います。感情の起伏、話す速度の揺れ、口ごもりや言い直し、その場の文脈に応じた強調。こうしたものは薄いか、ありません。合成音声だけで練習すると、平坦で機械的な話し方が身につく可能性があります。
また、合成音声は書かれたものを読み上げるので、書き言葉の抑揚になります。実際の会話の抑揚とは違います。会話のリズムを身につけたいなら、どこかの段階で、生身の人が話している素材に移る必要があります。
- 合成音声は、単語と短い文の手本としては信頼できます。
- 長い文章の抑揚、会話のリズム、感情の乗せ方の手本としては不十分です。
- あなたの発音が通じるかどうかの判定には使えません。それは人に聞いてもらうしかありません。
Lexi では、単語だけの読み上げと文全体の読み上げの両方ができます。声は端末に元から入っている音声合成で、Pro にすると文全体の自動読み上げが使えます。端末の機能を使っているので、通信がなくても鳴ります。上に書いた用途、つまり単語と短い文の手本としては、この形で十分に働きます。
声に出すことは、記憶にも効きます
発音の話とは別に、声に出すこと自体に記憶上の効果があります。黙読した語より、声に出した語のほうが思い出しやすい。これは記憶研究でよく報告されてきた効果で、産出という動作と、自分の声を聞くという体験が、追加の手がかりを作るためだと説明されています。
実務的には、これは無料の上乗せです。発音を直すために声を出しているつもりが、同時に語の定着も進んでいる。逆に言えば、語彙を増やしたいだけの人にとっても、声に出す理由があるということです。
ただし効果は魔法ではありません。全部の語を声に出すと時間がかかりすぎるので、選ぶ必要があります。新しく出会った語、発音が不安な語、そして産出用に育てたい語。この三つに絞るのが現実的です。
やりがちな失敗
速度を落としすぎる
読み上げ速度を下げると、聞き取りやすくはなります。ですが、遅い音は音のつながり方が変わります。連結や短縮は、通常の速度でしか起きません。遅くして練習した音は、通常速度では通用しないことがあります。使うなら、最初の1回だけ遅くして、あとは通常速度に戻してください。
聞くだけで終わる
聞いているだけでは発音は変わりません。変わるのは口の動きなので、口を動かさないかぎり何も起きません。10回聞くより、2回聞いて3回言うほうが効きます。
録音を聞かない
最も飛ばされる段階であり、最も効果のある段階です。自分の録音を聞くのは、たいてい気分の良い経験ではありません。ですが、その居心地の悪さが、直すべき箇所を教えてくれています。週に一度でいいので、必ず録ってください。
全部を一度に直そうとする
録音を聞くと、直したいところが5つ見つかります。5つ全部に取り組むと、意識が分散してどれも定着しません。1回の練習で1つ。それを何日か続けて、自動的にできるようになってから次へ移ります。
よくある質問
音声合成の発音は正しいのですか。
単語と短い文については、実用上ほぼ問題ないと考えていいでしょう。強勢の位置や基本的な音の並びは正確です。ただし、固有名詞や新しく生まれた語、同じ綴りで品詞によって読みが変わる語では、間違えることがあります。また、合成された音は生身の話者の音とは異なるので、長い文章の抑揚や会話のリズムの手本としては不十分です。参照としては信頼し、模範としては範囲を限定するのが妥当です。
シャドーイングはどうやればいいですか。
音声を聞きながら、少し遅れて同じ内容を声に出して追いかけます。意味を考えず、音とリズムだけを真似るのがコツです。最初は文字を見ながらで構いません。慣れてきたら文字を外します。使う素材は、内容が既にわかっているもの、そして自分が読める速度のものを選んでください。理解できない素材でシャドーイングをしても、音の模写にはなりますが定着しません。1回の練習は5分程度で十分です。
自分の発音が正しいかどうか、どうやって確認できますか。
最も確実なのは人に聞いてもらうことですが、それが難しい場合は録音との比較が次善の策です。合成音声と自分の録音を交互に再生して、具体的な違いを一つずつ特定します。ただし、これで確認できるのは手本との音の近さであって、実際の会話で通じるかどうかではありません。通じるかどうかには、速度、間の取り方、相手の慣れなど別の要素も関わります。最終的にはどこかで人と話す必要があります。
発音練習は、いつやるのが効率的ですか。
新しい語に出会ったその場でやるのが最も効率的です。意味を確認した直後に音も確認しておけば、意味と音が一緒に記憶されます。あとから発音だけを別途覚え直すのは、二度手間になります。まとまった時間を取る必要はなく、語を調べるついでに1回聞いて1回言う、という形で十分です。録音して比較する作業だけは少し時間がかかるので、週に一度、まとめてやる形でも構いません。
声に出すと本当に覚えやすくなりますか。
声に出した項目のほうが黙読した項目より思い出しやすいという効果は、記憶研究で繰り返し報告されてきました。産出という動作と、自分の声を聞くという体験が、記憶の手がかりを増やすためだと説明されています。ただし効果の大きさは条件によって変わりますし、全部の語を声に出すのは時間的に現実的ではありません。新しく出会った語、発音が不安な語、そして自分で使いたい語に絞って使うのが実用的です。
10分だけ、この方法を試す
Lexiは短い英文を1つずつ差し出します。そこに知らない語はちょうど1つ。タップすれば発音記号と意味、もう一度で文全体の訳、どちらも読み上げられます。ライブラリは端末の中にあるので電波がなくても動き、アカウント登録もありません。1日30文、すべての単語帳、すべての語義言語が無料です。